No.8
(2009/06)

「セレンディピティ」って知ってますか?

言葉のルーツは「セレンディップの3人の王子」という小説のよう。当初の目的とは全く繋がらない事象へ意図せず紛れ込んでしまった場合、引き返してやり直すのが一般的。ところが、それをそのまま進んで思いも掛けない方法で当初の目的に到達した場合、その、そのまま進むと「決める」ことができる力を「セレンディピティ」というそうです。

今ひとつよく判らないので、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹博士が講演で自分の発明について「セレンディピティ」を使った事例をご紹介。
ノーベル賞受賞対象となった博士の発明は、通電性のプラスチックパネル。銀行のATM(自動預金引出機)の画面などのタッチパネルの画面の材料として、今日では広く使われています。その発明に至れたのは、プラスチックの材料となる物質に、誤って高濃度の触媒をいれてしまったところにできたのが受賞に至った「通電性プラスチック」だった、という具合。
博士の例ですと、高濃度触媒を入れてしまったところにできた物質を捨てずに、興味を持ったところが「セレンディピティ」だった、ということになります。
失敗と思しきものが「セレンディピティ」力によって、成功に繋がるかも知れないとすれば、その力を付けることもいいかも知れない。

そこで、その力の鍛え方のヒントを脳科学者の茂木健一郎氏の話しから。
氏は、「セレンディピティ」は「行動・気づき・受容」のバランスで生まれるといっています。
なんだそうか、と聞き流してしまいそうになるのですが、よくよく考えるとこの3要素。行動
力があれば、気づきに欠けるし、という具合で、3つのバランスを取るのは案外難しい。この正反対な使い方をする3つの要素について脳をバランスよく使うことこそ、「セレンディピティ」力アップのヒントだというのです。
ところでこの方法。
その課題は、バランスが「良い」とはどういう状態かが不明ということこと。

そこで、私流。「目的達成だけで物事を眺めないこと」ではないかしら。
目的達成は、大事なことにかわりはありません。けれど案外、達成すべき目的の内容は短命な設定事が多いもの。
であれば長い人生、むしろ価値観とか方向性の方が「行動・気づき・受容」力を養うには、よほど大事だと思うのです。